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【シンガポール発】Google、ビルゲイツ、テマセクも出資、インポッシブルフーズの人工肉は美味しいのか

日ごろ食事で口にする肉類は主に、ウシやブタ、ニワトリを家畜として食用に育てられた物です。

近年、二酸化炭素排出を含め、環境への負荷を減らすためにこれら食肉用の畜産の代わりになるものがないか数多くの研究がなされています。

そこで注目され始めたのが「代替タンパク源」いわゆる「人工肉」です。植物由来のものをはじめ、昆虫や藻類からタンパク質を得ようとする試み、さらには細胞培養で肉をつくり出そうという細胞農業などがあります。

うさぎ君は人工肉とか代替肉って聞いたことがある?

聞いたことがあるけど、実験室とか試験管で作っているイメージかな。

確かにそういうふうに作るものもあるけど、アメリカでは既に沢山のスーパーやレストランで動物由来の肉の代わりに、植物で作られた代替肉が売られ始めているんだよ。そこで今回、シンガポールにあるレストランに行って実際に代替肉の料理を食べてきたんだ。

今回の記事では、なぜ人工肉が注目されているのか、何でできているのか、そして実際にレストランで食べてみた感想などをまとめてみました。

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どうして今人工肉が注目されているのか

でも、どうして普通にお肉が手に入るのに、わざわざ植物から作ったりしないといけないの?

医療や生活環境がよくなったことで、地球規模で人口が増加していて食料の供給が追い付かなくなる不安があるのと、畜産は環境にも悪影響があると言われているんだ。

人工肉が注目される理由を大まかにまとめると(1)環境保護、(2)食料問題の2点になります。

環境保護の観点から畜産を減らす

40%の地球上の居住可能な土地を畜産業は使用

国連食糧農業機関(FAO)によると、地球上の居住可能な土地の約40%を畜産業は使用しています。畜産産業による森林破壊、温室効果ガス排出、水資源の大量消費は環境破壊の主要原因となってきています。

畜産に使う水の量が尋常でない

牛を育てる牧場を確保するためには多くの森林を伐採しなければなりません。それに牛は1頭あたり1年に1万1000ガロン(約4万1700リットル)もの水を消費します。

牛のおならやげっぷは実はかなり環境に悪い

牛のおならやげっぷは、CO2の28倍もの温室効果のあるメタンガスを大量に排出しており、現在地球から排出されている温室効果ガス全体の15%はこの家畜産業が原因だとされています。

前述の図は従来の畜産動物肉と比べた場合、代替肉(インポッシブルフーズの場合)では土地、水、排気ガスでおよそ90%消費を減らすことができる事を示しています。

出典:インポッシブルフーズ

人口増加による食料問題

人々が肉を嗜好するようになり肉の消費量が肥大化した結果、資源不足に陥り、将来的に肉の供給が需要に追い付かなくなる懸念があります。

上のグラフの左軸の単位Mは100万。特に食肉用の豚とニワトリの生産量が急増しているのが分かります。牛に関しては緩やかな増産です。

人工肉とは:現在、市場に出ている人工肉はほぼすべて植物肉

学術的に人工肉は、「植物肉」と動物の細胞からつくる「培養肉」に分類されます。

植物肉は大豆・エンドウ豆・小麦などの作物から抽出した植物性タンパク質を原料とするものがほとんど。

植物性の風味物質を添加し食感と風味をより本物の肉に近づけたものであり、現在、市場に出ている人工肉はほぼすべて植物肉です。

インポッシブルフーズってどんな会社なのか

今回、筆者が食べに行った代替肉はインポッシブルフーズという会社によって作られた物です。

  1. インポッシブル・フーズの創業者でスタンフォード大学生物化学部名誉教授のパトリック・ブラウン氏
  2. 同社はファストフード大手のバーガーキングと提携し、植物由来の代替肉〔以下、植物肉〕を使ったハンバーガー「インポッシブル・ワッパー」を全米7,200余りの店舗で販売している。
  3. 規模:従業員数736人(2021年4月)、年間売上は今のところ160億円
  4. 場所:アメリカ、カリフォルニア州

インポッシブルフーズは2011年にスタンフォード大学生化学名誉教授のパトリック・O・ブラウン氏が会社を設立、2021年3月時点で出資総額は1500億円、会社価値としては4100億円ですが、2021年に上場を予定しており、上場後の企業価値は1兆円に達すると言われています

2015年にGoogleがインポッシブルフーズに300億円での買収を提案しましたが、即座に拒否されました(笑)。

ちなみに、日本での企業価値1兆円規模の会社は、最近半導体メーカーでニュースによく出てくるルネサスエレクトロニクス、醤油のキッコーマン、東京ガスなどです。設立10年の食品関連企業としてはかなりの高成長企業です。

出資者の顔ぶれは豪華で、インポッシブルフーズへの将来性、注目具合が伺えます。

テマセク・ホールディングス(シンガポールの政府が所有する投資会社)をリードとしグーグル・ベンチャーズ(現在のGV)、オープン・フィロソフィー・プロジェクト、ビル・ゲイツ、コースラ・ベンチャーズ、李嘉誠(香港最大の企業集団・長江実業グループ創設者兼会長、世界第8位の富豪)、そのほか、セリーナ・ウィリアムス、ケイティ・ペリー、ジェイデン・スミスなども入っています。

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インポッシブルフーズのの代替肉はどんな物?

商品群

現在は牛ひき肉の「 Impossible Beef」、ソーセージ(パテにしてあり少しスパイシーな物、マクドナルドの朝食メニューにあるソーセージマフィンみたいな感じ)の「Impossible Sausage」、そして豚ひき肉の「Impossible Pork」です。

何からできている

主な原材料は大豆、じゃがいも。ジューシーな食感は、遺伝子組み換えのヘモグロビンで再現をしています。

インポッシブル・ミート(Impossible Meat)」の秘密兵器は「ヘム」と呼ばれる動植物の細胞内に偏在する含鉄物質であり、植物肉の血色を良くし、ジューシーにする効果があるとのことです。

どこで帰るの?:日本ではまだ買えない・・・

2021年4月現在では、北米では1000以上のスーパーマーケットなどで買えますが、アジアではシンガポールと香港のみでの販売となります。

日本では三井物産が出資をしていることから、将来的には輸入されるかもしれませんが、現時点では残念ならがまだ一部レストランでの試験販売に留まっている様子です。

筆者はシンガポール在住なのでオンラインのLazadaで普通に買えます。350グラムで9.88シンガポールドル(約800円)。普通の冷凍牛ひき肉が300グラムでSGD3.80なので、値段は倍ちょっとというところです。まだ高めではありますが、以前はSGD18くらいしていたのでかなり安くなりました。

また、Lazadaではシンガポールのイタリアレストランの老舗、Da Paoloがインポッシブルフーズの代替肉を使って作ったミートボールやラザニアも売っています。

シンガポールでインポッシブルフーズの料理が食べれるレストラン

調べてみたところ、シンガポールには結構たくさんのレストランでインポッシブルフーズの代替肉を取り扱っています。

  • EMPRESS. Simple and classic Chinese fare in the vibrant Asian Civilisations Museum
  • The Marmalade Pantry (Downtown) Modern bistro serving brunch classics at Downtown
  • Privé Wheelock
  • The Coffee Academics (Raffles City)
  • Potato Head Singapore
  • Three Buns Quayside
  • PS.Cafe Raffles City
  • PizzaExpress (Duo)

詳しくはレストランサイト「Chope」で出てきます。今回は3番目にある「Privé」に行ってきました。

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人工肉(植物性の代替肉)って美味しいの?

なんとなく人工肉のことが分かってきたけど、あんまり美味しそうな気がしないんだけど・・・

確かに以前はパサパサしたおからを固めたようなものもあったけれども、今は技術の進歩で美味しいものもあるんだよ。

『フードテック革命(日経BP)「代替プロテイン」の衝撃」の本の中で、代替肉の完成度をレベルで説明しています。インポッシブルフーズの肉はこの中でレベル4.5を達成しています!ちなみに大塚製薬の代替肉「ゼロミート」は3.5です。

【代替肉レベル1;「肉の代用品」】

特徴/豆腐ハンバーグなど、肉を他のもので置き換えており、味わいからして自分が食べているものが肉ではないことが明確なもの。置き換えた食材自体の体験や価値も重視される。

【代替肉レベル2;「肉もどき」】

特徴/肉の食感を中心に再現したもの。素材の持つ栄養素や健康的な要素が価値となる。乾燥大豆ミートやセイタン(小麦グルテンを主原料とした食品)など、肉っぽさはあるものの、肉の香りなどはせず、乾燥した食材を湯で戻して調理するなど、肉とは異なる体験が残る。

【代替肉レベル3:「肉に近い喫食体験」】

特徴/ベジバーガーなど、肉の食感だけでなく味も再現しようとしたもの。ただし肉の香りはせず、ベジタリアン向け。肉付きの人々を満足させるには至らない。

代替肉レベル4:「肉と同じ調理~喫食体験」】

特徴/インポッシブルフーズやビヨンドミートに代表される植物性代替肉。”鮮肉”としての状態で販売され、調理すると赤身が茶色く変化し”肉汁”とアロマが広がるなど、調理体験まで肉と同じにしているもの。味わいや食感も本物の肉と大きく変わらず、肉好きの人にとっても満足度が高い。また、調理・喫食いずれにおいても変化は求められない。それでいて環境にいいなど、倫理的な満足感も得られる。低カロリーやゼロコレステロールなど、機能として肉に勝る部分もあるものの、塩分が多いなど、健康的な食品とは言えない面がある。

【代替肉レベル5:「肉以上の機能性」】

特徴/最先端プレーヤーが目指しているレベル。調理・喫食体験が本物の肉と変わらないうえ、肉以上の栄養素た保存性を実現したもの。もちろん、健康的な価値も担保されている状態。

『フードテック革命(日経BP)「代替プロテイン」の衝撃」

実際に食べてみた!

今回はシンガポール、オーチャード・ロードのWheelock Placeにあるレストラン、Priveでインポッシブルフーズの代替肉を初めて試してきました。

レストランは伊勢丹の向かいにあります。

メニューには前菜としてのミートボールにトマトソースがかかっているもの、メインでのミートボール・スパゲッティ、バーガーがあります。また、キッズメニューでミートソースパスタもあります。

前菜のミートボール
ミートボール・スパゲッティ

ハンバーガー
キッズメニュー

今回筆者が頼んだのは前菜のミートボールと、子供用にミートソースパスタです。最初に子供のパスタが来ました。

すぐ後に筆者のミートボールが来ました。

見た目は全く普通のミートボールです。切った断面も見ての通り普通のひき肉と見分けがつきません。

食べてみての感想は

  • 食感は普通のミートボールとほぼ同じ、あえて言えば少し目が細かい感じ、ジューシーではないが、パサパサ感もなく普通
  • 肉の味はやや薄めな気がする、注意して食べると少しだけ大豆プロテインの匂いがする
  • パスタはミートボールではないので全く普通のひき肉との違いは感じない

メニューからもわかる通り、基本、ソースの味付けが濃い料理となります。恐らく濃い味のソースにしないと大豆プロテインの匂いが分かりやすくなる、ミートボール、パテが少しパサついた感じになってしまうからだと思います。

次回はレストランではなく、代替肉を買って自分でいくつかのレシピを試してみたいと思います。肉じゃがやそぼろご飯など、うすあじの料理でどのような感じになるのか楽しみです。

今後の課題

価格

今回の代替肉は培養肉ではありませんが、2013年にオランダ・マーストリヒト大学教授のマーク・ポスト医学博士がつくった培養肉の試食が行われた時、研究開発費を元に算出した価格は200gで当時で2千800万円にも上りました。

現在、インポッシブルフーズの冷凍牛ひき肉はLazadaで350グラム入りがSGD9.88(約800円)です。培養肉、代替肉を広く普及させるには、シンガポールで売られている冷凍牛肉の価格、300グラムでSGD3.80なので、多少のプレミアムを乗せたとしてもSGD4.50くらいにする必要があります。

現在のインポッシブルフーズの生産量は動物肉のそれと比べると微々たる物なので、大規模生産に移ることで十分低コスト化は可能です。さらには土地取得コストでかなり有利(土地が畜産と比べるといらない)なので、土地代及び流通コスト削減(より都市部に近いところでも生産できる)の可能性はかなり高いと思います。

栄養とバランス

インポッシブルフーズの植物性パティは塩分が高いなど、やはり油分が少ないので呈味を増強させるものが多く含まれています。肉の食感を維持するには添加物も必要なので、畜産動物からのひき肉と比べると新規な添加物があり、今後も継続してモニターする必要があります。

また、インポッシブルフーズの代替肉は4オンス(113g)あたり240kcalで飽和脂肪酸を8g含んでおり、Beyond Meatの人工肉を使用したハンバーガーは4オンスあたり250kcalで飽和脂肪酸を6g、一般的な牛赤身挽肉を使用したバーガーは4オンスあたり283kcalで飽和脂肪酸は6.7g。飽和脂肪酸に着目すると、人工肉と通常のひき肉は大差がなく、Impossible Foodsの人工肉は通常の肉よりも飽和脂肪酸の量が多めです

まとめ

人工肉・代替肉の現時点でのまとめは以下の通り

  • 人工肉への注目は主に人工増加による食料供給問題と、畜産による環境負荷を減らすことから来ている
  • 人工肉には動物の肉を利用した培養肉と植物から作る代替肉がある
  • 現在、市場に流通している人工肉はほとんどが植物による代替肉
  • インポッシブルフーズの代替肉は肉としての完成度レベル五段階の中で4.5と高得点
  • 実際に食べてみると、味の濃いソースと食べると普通の肉との違いはほとんど分からない
  • 強いて言えば大豆プロテインの匂いが少しするのと、ミートボール、パテは少しだけパサつきがある
  • シンガポールのスーパーでの値段は、普通の冷凍牛ひき肉と比べると倍
  • 普通の肉と比べるとトランス脂肪酸、添加物がやや多い
  • 生産コストは今後の生産規模拡大によりかなり下げれる可能性が高い。

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  • この記事を書いた人

ななころ

外資系企業で長年グローバル・マーケティングのトップとして勤務後、東南アジア在住で独立。コモディティ・トレーディングとマーケティング・コンサルティングを行う。趣味は筋トレと料理。

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